12歳の少女が見つけたお金のしくみ
本書の内容
当時12歳だった久谷理沙さんが書いたコンクールの作品がベースになって書かれています。
つまり、12歳の少女がアイデアを形にした本です。
詳しくいうと第23回全国小・中学生作品コンクール(子どもの文化・教育研究所)で文部科学省奨励賞を受賞した『物の値段を考える』という作品の本です。
私たちのように大人になると、物の値段=自分の生活、利益がお金の仕組みと思ってしまいます。
この久谷理沙さんは、基本的な値段の決まり方だけではなく、景色や空気、水の値段、時間の値段、そして命の値段について考えています。
景色、空気、水の値段に値段はつくのか?
景色、空気、水に値段がつけることができるのだろうか?
そんなことを考える小学生…、変わっていますが優秀ですね。
そんな大人以上の考え方がとても好感を持てました。
景色や空気、水の値段を考える前に、一般的な物の価値とは何で決まるのでしょうか?
本書でも需要と供給から始まります。
つまり欲しい人がいれば、価格が上がり、物が増えたり欲しい人が減ると価格が下がります。
価値があるとは需要が高い商品の事を指します。
あなたが欲しいものは、iPhone、東京のタワーマンションでしょうか?
あなたが欲しいモノは、ほかの人も欲しいはず。
そうした商品は価格が高騰します。
希少性が高いと値段が上がる
では先ほどの空気はどうでしょうか?
お金を払って欲しい人は…、いませんよね?
空気はそこら中にあるため、希少性がないのでタダ。
こういう希少性がないものを自由材といいます。
自由材は原則としてタダです。
ほかにも自由材といえば、簡単に思いつくものは海水、太陽光、空気でしょうか?
水は自由材に入るかは場所によりますね。
都市部では水道局が管理しており経済財に入ります。
このように考えると自由材は価値がありません。
ここからは私の考えですが、自由材に価値を持たせることができないでしょうか?
つまり空気に価値を持たせる、太陽光に価値を持たせる、海水に価値を持たせることです。
空気であれば圧縮してボンベとして利用する。
太陽光発電として太陽光を利用する。
海水をろ過して塩をとるといった方法が考えられます。
しかし自由材のみであれば値段つきません。
ただしそこが観光地などの特殊な環境であれば、美味しい空気、そこでしか見れないものがあり、新たな価値が生まれます。
逆に言うと、その自由材を守ることが必要になりますよね?
誰にとって価値があり、誰にとって価値がないのか?
街をきれいにするということは、誰かにとっては価値がないのかもしれませんが、地域住民にとっては非常に価値がある行為です。
そんな風に考えると、希少性がなくても勝負できるところはたくさんあるのかもしれませんね。
この話を聞いて思い出したのは『FIRE 最強の早期リタイヤ術』
本書で紹介されているエピソードの1つに、モノを購入するときの幸福度は徐々に薄れるが、体験に対する幸福度を繰り返しても幸福度はあがると理論が説明されています。
自然体験に必要な山や川などは、大きな価値に変わる可能性を秘めているかもしれませんね。
時間の値段
時間に値段がついているのか?
また時間を買うとはどういう行為でしょうか?
そもそも時間を買うことができるのでしょうか?
時間を買うとは限られた時間を有効に使うためにお金を払うことを差します。
つまり時間にはモノと同じように値段があるということです。
だから時間は売買できるということになります。
たとえば20分かけてタクシーで行きたい場所に向かうと1500円かかったとします。同じ場所に40分かけて電車に乗って向かった場合、300円でした。
この場合は20分早くつくために1200円で、20分の時間を買ったことになります。
20分という時間が1200円。
高いと思うか、安いと思うかは、20分という価値をどう考えるか、空いた20分を何に使うのかという考えるのか?によりますね。
ただ極論でいうと移動時間は、時間泥棒なので短い方がよいともいうことができます。
ここでは、あえて本書の答えとは全く異なる切り口で異を唱えてみましょう。
例えば京都から東京まで青春18きっぷを利用して移動した場合、約10時間はかかります。
しかし京都から東京まで新幹線で行くと2時間かかりません。
どちらが楽しい時間だったのかというと、10時間かけたほうが楽しい結果でした。
これは3年前に実際、むすめと2人で利用した方法です。
この移動時間は無駄だったのでしょうか?
私にとってこの旅行は、次に生まれ変わってもまたいきたいと思える思い出の1つです。
こうして考えると東京に行くという時間はお金を節約できたうえに、先ほどにもあった楽しい経験に投資できたのであれば、格安で楽しい時間を買うことができました。
とても割のいい投資だったと思います。
時間を買うことができますが、買わない事で見える景色もあります。
合理的を追い求めすぎると、成長する機会が失われる可能性があります。
そんな視点を持って行動しましょう。
時給思考を大切ですが、何に時間を費やすかは、小さいころから考えておいても損はしないと思います。
命の値段
いちばん重要な命の値段です。
そもそも命に値段があるのか?
人の命に値段をつけることができない。
しかし世の中にはどうしても命の値段をつけないといけない場合があります。
それが生命保険です。
もし受取人が1億円を支払う契約にすると「失われた命の値段」は1億円になります。
また2倍の契約をすると2億円になり、これを繰り返すと値段があがっていきます。
もう1つの例は交通事故の死亡した時の賠償金です。
死亡事故の賠償金は葬儀費用+慰謝料+生きていたら稼げるはずだった利益(逸失利益)の合計になります。
その額は収入や養う家庭の数、年齢によって変わりますが、だいたい相場は2千万円から3千万円になります。
本書には臓器売買にも触れています。
本書には掲載されていませんが、2012年4月8日に、中国でiPhoneを購入したいために1つの腎臓を25万8千円で売った少年の事を思い出しました。
このような臓器売買においても適正な値段とは言いがたいですが、命の値段について私たちは真剣に考えて、子ども達に命を大切にすることを教えていく必要がありますね。
12歳の久谷理沙さんがどのように大人になったか?
本書では現在の久谷理沙さんと再会してインタビューをしています。
大学は建築学科を出て、その後、都市開発の仕事についているみたいです。
金融や経済は、特別好きというわけでなかったからこそ、短期間で思い切り書くことができたと振り返っています。
まとめ
大人の視点でみると優れた作品であっても、小学生の視点では一つの視点でしかないのかもしれません。
また小学生から経済学を学びたいと思っている人は、ほとんどいないかもしれません。
それでも知っている、経験したことは財産になりますね。
これから高等教育で資産形成に対して授業が開始されます。
資産形成の番外編として、この本を紹介してみてはいかがでしょうか?
おとなもぜひ読んでみてください。
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